星の祈り
切ないような

幸せなような

苦しいような

一言では言い表せられない不思議な気持ちにおそわれて、私はその輝かしい世界から目をそらすことができなかった。

そこには、都会のネオンのような華やかさや、遊園地のような明るさはないが、人を魅了する“何か”が存在していた。

それが何なのかは分からない。

けど、確実にあった。


 ふいに目の奥からあふれ出してきたものが頬を濡らした。

手で触ってみる。

これには自分で驚いた。

だって、ここ数年一度も泣いていなかったから。

しかしなぜだかあふれ出してきたそれは、私の中にあった“何か”も一緒に持ち出してくれた。

心が穏やかになっていく。

それが何なのかは分からない。

けど・・・。

・・・どうやらこの惑星には“何か”という訳のわからないものが多いらしい。


 星空など、どんな所に行っても雲が遮らない限り見える。

いわゆる“ありふれたもの”だ。

ここで見た星空も同じ。

だけど、今まで見たどんなものより美しく感じた。

きっと明かりがないぶん、星のかすかな光が目立つのだ。

私はその世界にのめりこむように何十分も、何時間も見続けた。

そして、眠いと感じることもなく、いつの間にか夢の世界へといざなわれていった。



最初に感じていた恐怖は、いつの間にかなくなっていた。
 
 
 


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