星の祈り
 過去の旅を終えて、目を開けた。

そこは、いつものリビング。

当たり前だと言ったら当たり前だが、目を開けたら、あの幻想的な風景が広がっているような気がなんとなくしていた。

私は座った時と同じように、ゆっくりと立ち上がった。

向かった先は、台所とは反対側の大きなガラス張りの窓。

カーテンをそっとめくると、そこにはいつもと変わらない星空が広がっていた。

・・・あの日と変わらない宝石の世界。

それを見て、よかったと心の中でつぶやいた。

あの後、数年前の私はすやすやと眠っているのを通りがかったカメラマンに発見され、警察のお世話になり、両親にひどく説教されるというかなり悲しい目にあっていた。

もうあんな目には二度と会いたくないものだ。

だけど、あの砂丘で得たものは、それ以上のひどいことをされてももうしぶんないほど価値のあるものだったように思った。

だって、そのおかげで私はこの町が好きになれたのだから(正確には“この町の美しい星空が”だが)。


 なんどみても、この星空には吸い込まれそうになった。

そればかりでなく、母親の胸に抱かれたような安心感も感じられた。

無数にある星たちの瞬きのせいなのか、周りにたくさんの人がいるような気がするのだ。

それと同時に、私はいつも考えた。

宇宙には、こんなにたくさんある星がもっとたくさんあって、その中の1つに地球があって、わたしはそこで生きてるとてつもなく小さな生物なんだ、と。

そう考えると、私という人間がどれほどはかなくもろい、ちっぽけな存在なのかがわかるような気がした。
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