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あなたがこれを読む頃、
私はもう空気の一部となっているのかしら。
わたしね、あなたに秘密にしていたことがあるの。
私は癌です。
すべてに絶望していたわ。
だってそうでしょう?
どんなに祈ったって、私は普通の人より、あなたよりずっとはやく死んでしまうのだから。
あなたと恋に落ちても、あなたという親友を作っても。
死という恐怖は確実に私との距離を縮めながら、わたしを追ってくる。
生きたいと思う理由なんていらない。
そう思っていたわ。


あなたに出逢うまでは。


あなたは変わった人だった。
あなたから見ればわたしも勿論変わった人だっただろうけど。
明るいのになぜか変に落ち着いてるし。
変わったひと。
わたしを好きになってくれたのに、わたしと微妙な距離を保っている。
近づいたとおもったらいきなり離れて行く。
そんなあなただからこそわたしは愛してしまった。

好きよ、ずっと。

あなたと出逢ってわたしは人を愛する意味を知る。

生きていたいと思ってしまったの。

だからわたしはあなたと離れました。

今は小さな病院で一人静かに死がくるのを待っています。

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