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俺の知る限り、加奈子には俺しか親しい友達がいなかった。
そして、加奈子には友達なんて必要なさそうにも見えた。

「…ごめんなさい。私には彼氏はいらないわ。」

加奈子はその大人びた容姿からか、異性から人気があった。
俺は初め加奈子が他の男と交際を始めたらどうしようかとハラハラしたが、いつも加奈子は告白を断るのでいつしかそんな心配もなくなってしまった。
いつだったか、あまりに男に興味のない加奈子にこんなことを聞いたことがある。

「加奈子はさあ、」

「…何?」

「男と付き合う気ないの?」

「ええ、ないわ。」

「もしかして、加奈子…」

「同性に興味なんてないわ。」

加奈子は同性だけでなく、人間、いやすべてのものに興味がないのだろうと俺は思った。

少しだけ悲しかった。

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