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加奈子と出会って、半年の月日が流れた。
俺と加奈子の関係は変わらず、たまに放課後に話したりする程度の関係だった。
俺の知る限りで、加奈子はあいかわらず誰にも興味を示さないし。
俺も加奈子が好きなままだった。

「ねぇ、あなた。」

加奈子は俺のことをあなたと呼んだ。
俺の名前さえも覚えていなかったのか。
と、いつも俺は落胆していた。

「何?」

「B組の、えっと…山本…山口だったかしら。まあ、その人の事どう思う?」

B組には山口も山本もいない。
しばらく考えてから、それが山崎だと言うことに気が付いた。
そして、頭が真っ白になった。
山崎とは、高校一年にしてサッカー部のエース、学年一の秀才、そして綺麗な顔立ちで、学年で1番人気のある奴だった。
もちろん性格もすばらしかった。
そんな奴の名前が好きな女の口から出たら、誰だって焦ってしまうと思う。

「や…山崎がどうかした?」

俺は動揺を隠しながらも加奈子に聞いた。

「ああ、山崎くん。彼がね、私にサッカー部のマネージャーになってほしいってしつこいのよ。」

加奈子は本当に困っているようだった。

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