√2

俺はその日、赤点をとった補習授業があり、一人教室に残っていた。
教室の扉が開いた。

「…加奈子。」

「………。」

加奈子と顔を合わすのは久しぶりで、俺はどう接したら良いのかもわからずにいた。
加奈子はなにも言わない。
不思議とその沈黙は重いものではないように感じた。




どのくらいの時間がたったのだろうか。
俺は補習に行くのも忘れ、ただ時間がすぎてゆくのを感じていた。

「…久しぶりね。」

加奈子が呟いた。

「…久しぶりだな。」

俺も呟くように返事をした。
夕日が俺たちを包んでいるようだった。

< 9 / 14 >

この作品をシェア

pagetop