キミの願いを

――「中田さん。そこ、あたしの席。たぶん、中田さんはそっち。」


あたしの座っていた席の、1つ後ろを指さされた。


「あっ!ごめんなさい!

あの…藤本華ちゃんだよね?あたし、エマでいいよ!」


その女の子は、慌てて席を移動するあたしをじっと見つめてから、ふっと笑った。



「あたしのことも、華でいいよ。」


「うん!」


入学式。

期待と緊張に包まれる、教室の中。

はじめましての話し声が、どこからともなく聞こえてくる。



「俺は室井司(ムロイ ツカサ)。」


「あれっ?お前、もしかしてさっきの?」


隣の席の男の子の声が、耳に入る。


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