キミの願いを
――「先生。また隣の席の人がどっか飛んでってます。」
「まったく…。中田さん?」
「えっ…はい?」
先生に呼ばれて、はっとする。
「じゃあ今の文を日本語訳してください。」
「…すいません。聞いてませんでした…。」
「ほんっとに。学園祭が近づいてるからって、浮かれてないで…」
あぁ…あたし、輝先輩のことを忘れたいなんて、口先だけだ……。
「また、橘輝のこと考えてたんか?」
隣から、呆れた琉唯の声。
「うん……そうかも…。」
じわりじわりと瞳に溜まるそれを、こぼれ落ちないように上を向いた。
「お前……
あいつと何かあったん…?」
「…………」
声が震えてしまいそうで、言葉に詰まった。
琉唯は、それ以上は何も聞いてこなかった。