ジェミニ

pi.pi.pi.........





私の枕元ではヒヨコが鳴いている。おかしい。私はヒヨコなんて飼っていない。
だから私はもう一度夢の中に旅立ちます。皆さん御機嫌よう…。





『バカな事言ってないで起きろよ。』





私の中で声がした。夢の中で聞いた声よりも随分低くなった声。毎日、嫌って程聞いている声は聞こえないフリをして布団の中へ潜り込む。3月も半ばとはいえ、朝は寒い。外の外気をシャットダウンした布団の中は私の吐く息で湿っぽかったけれど温かくて快適だと思う。




再び襲い掛かる睡魔に抵抗する気は更々無くて、おいでおいでと手招きする睡魔に誘われるまま目を閉じると私に良く似た彼が、眉間に深く皺を寄せて此方を睨むのが見えた。




『起きろって言ってんべ！つか、今日からジョギングするんじゃねーの？』

「明日からやる。今日は寒いもん。寝るもん。」

『もん、なんて言っても可愛くねぇよ。起きろ！天気予報で、今日すっげーあったかいって言ってたから。』


なんて憎たらしいことばかりポンポンと出るもんだ。私にそっくりな顔をゆがめて、そんな憎たらしい言葉ばかり並べないで頂きたいものだと思う。反論したところで私はナオに勝てたためしがないから大人しく目を開く。ああ、朝日が眩しい。

不意に疑問が脳裏を掠める。



「ね、ナオいつ天気予報見たの。あんたあたしの中だよね？」

『それは企業機密ですよミオさん。』






私に良く似た笑顔でナオが答えた。