~親友という名の絆~


「…姉さん…」


本殿に上がる石段の途中に理恵は腰掛けていた。

涼が声を掛けると、あんなに曇っり悲しみに満ちた顔は直ぐに消え何時もの爽やかな笑顔に戻った。


持っていた竹箒を柱に立てかけると、涼は理恵の隣に座り小さな溜め息を吐く。


「やっぱり何かあったのね。喧嘩?」


「違うよ。」


『なら、どうしたの?』と妹の顔を覗き込み理恵は尋ねた。


「何って言うか…さぁ…僕、翔に友達だって思われてなかったみたい……それで………」

「複雑なのね。」

「うん…ガッカリしてるような…悲しいような……何かなぁ~」

「そういうことだったのね。」

手元の視線を遠くに移し、涼は膝を抱えまた小さな溜め息をついた。




「小さい頃から一緒に遊んだり、お喋りしてさ…僕たちはずっと友だちだと思ってた。
翔はさ、いっつも膨れっ面で笑うこと滅多にないけど、時々僕の前では笑ってくれる。」


「涼だって同じよ。私と翔くんの前でしか自分を『僕』って言おうとしないよね。
一部の人にしか自分を出せないってコトは、その人には心を許せてるってコトじゃないかな?」


遠くの景色から視線を外し、自分に笑いかけてくれる姉に目を向ける。



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