~親友という名の絆~
「お義父さん!」

同じく震える手で遠矢は神主の肩を掴んだ。

「『神社に仕える娘は、災害時にその身をもって制すべき』…遠矢も知っているだろう?」

「はい。しかし、15年前は…」

「あの時、理恵はまだ数えで2つ、涼はまだ生まれていなかった。
どうして良いやら、この日の様に右往左往していた時、あの灰色の髪をした男が駆け込んできて、『私という存在が災難をこの地に呼んだのです。この命でこの村もヒトも助かるのなら、どうぞ』と、何度も何度も私たちに頭を下げてきました。それで、皆彼に頼むことにした。」

「しかし、今は…」



候補は2人


しかし、1人は身重


だから決まっているも同然



「掟にそって、私は…あの子を…送り出さなければね……」

「お義父さん…」




「決まり…ですな…」

村長の声


「儀は明日の夕刻に執り行う。」

「はい…」

神主は答えた。


遠矢は俯き、部屋の中心に灯る炎に目を落とした。
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