~親友という名の絆~
(そんなの、分かっ…てる……けど、僕は…ボクハ……)



脚をふらつかせ村の中を歩いていく。




「…雨が止まないわ…」


格子窓がついた家から小さな声がした。


「どうして雨は止まないの?」

「もう上がってもいい頃なのに…」


さほど大きく無い家から幾つもの声が漏れだした。


「人柱まで捧げたというのに…」


「…トウジ、お前はあの場に居たんだろう?」

ある男の目に霊のごとく歩いていく彼女が映った。

「あぁ」

「ちゃんと、儀は行われたんだよな?」

「…あぁ」

男は立ち上がり、窓の外を指差した。

「なら、何故あの娘が居る!?」

「何だと!?」

指差した窓に人が群がっていく。


「本当だ!」

「何故だ、トウジ」

「それは…違う子どもが…直前で……」

問われたトウジはそう横を向いたきり、口を噤んだ。




「…あの娘のせいだ…」


一人が呟いた。


「そうだ、あの娘が生きているからだ。」

「人柱がまだ生きているから山の神が怒っているのだ。」


あの場の事を知らない者たちの声


雨の止まぬ苛立ちが在らぬ方向へ向けられた。




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