心 の 隙 間
『じゃっ、俺七実のこと送ってくから。』
平野先輩の声にハッと我に帰るあたし。
『苗〜。ハル先輩、バイバイ!』
『おぅ。じゃあな!』
「ば…バイバイ。」
平野先輩と七実は、手をつなぎながら幸せそうな顔をして帰っていった。
『ふ〜。』
隣で大きく息を吐くハル先輩。
わ…。
…どうしよ。
二人きりだ。
「…あ、あたしん家こっちなんで。」
早く帰りたいっ。
あたしは少し早足で歩き出した。
パシッ。
そんなあたしをハル先輩の腕が掴む。
固まるあたし。
『…送るから。』
そう言ってハル先輩はあたしの腕を掴んだまま、歩き出した。
…さっきのように無言になって歩き続ける先輩。
あたしもどうすればいいか分からず、無言で歩き続ける。
すると先輩が急に小さな公園の前で止まった。
……あ。
ここ、中学生のときからよく宏人と来ていた公園……。
「こっ公園なんて、いつぶりだろっ。久しぶりだなあ〜!」
わざと明るく振る舞うあたし。
先輩は無言のまま。
そのまま、ちょっと色あせた黄色のベンチに座った。
つられてあたしも座る。