心 の 隙 間
どうして……?
どうして宏人は…あんな雑誌読んでたの………?
帰り道。
さっき宏人と歩いてきた道を早歩きで戻る。
宏人はずっと…
どうしたらいいか考えてくれてたの………?
あたしは……
あたし…は……
逃げたんだ…………。
私は道の途中で座り込んでしまった。
「……うっ。……ひっく。…………ーっ……。」
バカバカバカ……。
あたしの…バカ……。
もう戻れないのに…。
あたしにとって空気のような存在。
宏人と同じ空間にいるだけで、暖かくなるあたしの心。
どうして今頃、気付くの…………?
こんなに……。
こんなに大切なものに……………。
その時……
フワッ
何かがあたしを抱きしめた。
「…………っ…!」
顔をみなくても誰だか分かる。
懐かしいぬくもり。
大好きだったくもり。
ほんとはずっとずっと欲しかったぬくもり……。
「…宏人……?」
『………。』
「ひろ……」
『戻ってこいよ……。』
「………え?」
あたしの声に重なって聞こえてきた小さな声。
ギュッ。
抱きしめる力が強くなる。
『……俺…はっ、苗以外なんて考えらんねえよ………っ。』
声が震えているのが分かった。
宏人……
泣いてる…の……?
今まで、付き合ってて宏人が泣いたことは一度もなかった。
そんな宏人が……
…泣いてる………。
泣いてるよ……?
あたしは、クルッと前を向き、泣いている宏人の頭を抱きしめた。
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