赤い糸はだあれ?−あたしと五人の王子様−
フリースロー練習の途中で戻ってきた俊先輩が、皆に頭を下げた。
そして、さとちゃんは・・・
顔を真っ赤にしてこっちへと走ってきた。
「ごめんね、マネの仕事できなくて。」
「いや、大丈夫だよ。
・・・どうした、の?」
鼓動が速くなる。
この嫌な予感は当たってほしくない。
「ごめん、私・・・
俊先輩が好きで。
告白したの。」
嘘だ。
「ずっと黙っててごめんね。
でも、押さえきれなくて。
気持ちだけでも知ってもらいたかったから、振られるの覚悟で告白したの。」
嫌だ。
こんな話聞きたくない。
「そしたら、付き合ってくれるって。
・・・あの、ホントに酷いことしてごめんね。」
なんで?
なんで、言ってくれなかったの?
なんで、嘘ついてたの?
私が俊先輩の話をしてるとき、笑ってたじゃん。
『俊先輩にタオル渡すのお願いね。』って、ウインクしてたじゃん。
あれも嘘だったの?
ムリに笑ってみるけど、多分笑えてない。
「おめでとう。」
心からなんて思えてないセリフを、引きつった笑顔で言ってみて。
臆病者のあたしは、本音を言うことなんかできなくて。
呼び止める絵梨もムシして、洗濯物を持って逃げてしまった。
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