赤い糸はだあれ?−あたしと五人の王子様−
「あいつらは、技術としては高いものを持ってると思う。
それはレギュラーでないやつもそうだ。」
ただ・・・と、前ちゃんは険しい顔になる。
「“チーム”としてのレベルは低い。」
確かに、遠征に行ったときも相手チームのスピードにビックリした。
それでも、うちのチームが勝ててたのは。
・・・シュートが決まってたから。
「こいつらは、パスする奴の名前を呼んでる。
その、誰なのか判断してる時間がもったいない。
むしろ、邪魔だ。」
そうだ。
他の学校のパスは凄かった。
速くて。
正確で。
アイコンタクトなんか、いつ取ってんのかわかんない。
「誰なのか理解するのは大切だ。
点に繋がるからな。
ただ、考える時間はいらない。
本能で瞬間的に判断する。
パスされる側も瞬時に理解する。
それが一番いい。
それで敵を翻弄させられる。」
だが。と言いかけて、フッと吹き出した。
・・・え、なに?
「まだ4月だからな。
そのレベルは期待してない。
だから、投げりゃいいんだ。
俺は誰に回ってもいいように組んでるんだからな。」
さすが前ちゃん。
わかってたんだ。
パスか・・・
相手を決めて、見て、誰なのか確認して、名前を呼ぶ。
そんなことをしてたら、パスする相手がバレる。
そっか。
だからパスカットされやすかったんだ。
「・・・そろそろ“チーム力”鍛えるか。」
ボソッと呟いた前ちゃんは、嬉しそうだった。
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