赤い糸はだあれ?−あたしと五人の王子様−
「違う。」
体育館に大きく響く声は、やっぱり揺るぎなかった。
「勝ち負けに意識を持ってくのを止めろってことだ。
そっちに気が行くと、癖が出やすくなる。
勝とうとすれば早くゴールを目指したくなって、気が回んなくなるんだよ。」
その時、俊先輩が。
誰にも気づかれないように、下から哲先輩の裾を引っ張った。
たぶん俊先輩は、最初から全部わかってた。
そんな気がする。
ストン、と哲先輩が座るのを待ってから前ちゃんは静かに話を続けた。
「勝ち負けより、アンテナを張ることに集中しろ。
敵に取られてもいい。
まずは名前を呼ばずにパスができるようになるのが先だ。
勝ち負けはそれからだ。」
『はい!』
大きく返された声は、息がピッタリ合っていて。
皆の強い力が、あたしの方まで伝わって響いた。
・・・やっぱ、この人たちはすごいんだな。
その時は、女バスを忘れて。
男バスの方ばっか見てた。
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