to Home!!
走って、走って、走って
足が鈍くなったころに着いた場所は、祐也さんと出会った公園。
かなわない
やっぱり、直子さんにはかなわないよ
やっと脳が動き出した。
この場所も苦しい。
公園から離れたくなった。
祐也さんとの思い出を悲しみで汚したくない。
重い足取りで、駅の近くのベンチへ向かった。
そこから見えるのは、仕事帰りのサラリーマンやOLがたくさんすれ違っていく風景。
さっき
祐也さんの横をすり抜けた時、見えたんだ。
直子さんを抱き締める片手がピクリと動いたのを。
きっと私が出ていくのに気づいたからだ。
でも、気づいてくれたけど
名前は呼ばれなかった。
ハッキリと突き放される、私の理想と現実。
私って
こんな弱い人間だったんだ…
「矢野…?」
誰かが私を呼んだ。
声だけ聞こえるのに、見えない。
さっきまで見えてたサラリーマンやOLも見えない。
その訳に気づいたのは、熱い何かが頬を伝ってから。
だって、そしたら視界が綺麗になったんだから。