to Home!!
なんだよ、ちゃんと…って。
「好きだよ、ちゃんと」
「違うの」
言い返しても頑固な直子は自分の意見を曲げない。
もう、何を言っても無駄だ。
「裕也は経験が少ないから、そう思うだけ。私じゃ、裕也の全部を引き出せないから」
「…」
俺の全部は俺自身じゃないのか?
混乱していたせいで、声も出せない。
「お互いの為に…友達に戻ろう」
こうして、一方的な解釈で俺たちは別れた。
後に俺はズルズルと未練がましく引きずるが、直子は切り替えが早かった。
別れて半年後に別の男と付き合ったのだ。
─…
あの時言われた
「俺の全部を引き出せない」
今なら分かる…
俺の中の空白だった何かが埋っている。
今は満足感があって、余裕も出来て…
柔らかくなったと言われたのだって
未裕がいるからだ。
直子にも、今は別の恋人がいて…お互い幸せを掴みかけてる。
いや、直子は掴んでるのか。
「お互いの為…か。お前、あの時でよく今を推測できたな」
未来でお互いが別の幸せを掴もうとするなんて、あの年で想像できるか?
直子は笑ったまま言った。
「今なら言えるけど、裕也、私と付き合ってるとき、全然ふざけたりしなかったの。友達の前ではよくやるのに」
「…そだっけ?」
「ほら、気づいてなかったんでしょ?あんたが無意識だったからこそ私も気づいた時はかなり傷ついた。…私にはまだ心は全開にできないのかって」