ツキハナ〜月の花束〜
「ですから、肝心な部分が抜け落ちているのです。」

「だから!!何が!?」

「私の口から言うことは、できないのです。」

毎日のように、繰り返されてきた問答に嫌気がさす。
「…リヒト…」

「はい。」

「黙れ。」

「……はい。」

一番嫌なことは、コレだ。一言、命令すればリヒトは必ず「はい」と答える。どんなに理不尽でも、だ。

以前は出来ていた言い合いも、今ではもう出来ない。
それが、突き放されたようで…。


「…」
「…」

沈黙が流れる。
こういう時、リヒトは私が話し出すまで、絶対に口を開かない。
これも、以前なら私が気まずくならないように、先に話かけてくれていた。


―イライラするっ!!―

「出掛ける!!」

「……いってらっしゃいませ…」

一つ息を吐き、答えたリヒトに苛立ちは募る一方だった。



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