ツキハナ〜月の花束〜
街をぶらぶらしながら、ぶつぶつと文句を言う。

「何よ!?あれっ!文句があるなら、言えっつうのっ!!」

ムカつく。
けど。
仕方ないのかもしれない。一方的とはいえ、リヒトは私の従者だと宣言したのだ。今までのように、出来ないのは当たり前。


それに。
過去のこともある。

あの裏切りによって、私は全てを失った。
ヒカルとショウが命を賭けて助けてくれなければ、私はどうなっていたか…。

赦すつもりは、ない。

けれど、何も知らなかった頃の私が、赦したい、と願う。

どうしていいか、分からないアンビバレンスな感情が私を苦しめる。

「…リヒト、さん、のバカ…」


更に苦しめるは、愛された記憶。
抱き締めてくれた記憶。




『愛してます。カオ』


その言葉だけで、強くなれた私は、もういない。









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