ツキハナ〜月の花束〜
公園のブランコに揺られていると、1人の男性が声をかけてきた。

「君、1人?」

ナンパか。
茶髪に、口ピアス、だらしなく着こなす姿で判断する。

「ねえ、暇ならさ?一緒に遊ばない?」

無視しよう、と思った。
が、急激な喉の渇きを覚える。心臓が痛くなる、その渇きは、覚えがあった。

―性気を、吸わなくては…

そう思った途端、目の前の男から、美味しそうな匂いがしてきた。

ごくり。
喉を鳴らし、立ち上がる。

「おっ!オッケーってこと?やりー!!」

下心を隠さず、喜ぶ男に、嫌気がさしながらも、背に腹は変えられない、とついていく。

けれど、公園を出ようとした時に見覚えのある人物が近付いてくる。

「カオ。迎えにきましたよ。帰りましょう。」

嫌になるくらい整っている顔に、惚れ惚れするスタイル。長身の男の、上品な物腰に、ナンパ男は怯む。

「…邪魔するな。リヒト…」

「…えっ?君の知り合い?」

と、言いながら後退りする。

「どなたですか?うちのカオに何か?」

ギロリと睨まれ、ついには男は逃げ出した。

「あ…ごはん…」

ついつい本音が出た。

「カオ…いくらなんでも、相手を選んでください」

溜め息混じりに言われる。ほっとけ、と思う。

「お腹すいた…」

切実な願いに、リヒトはとりあえず帰りましょう、という。

嫌だ、と逃げ出そうとした時、一瞬早くリヒトが手首を掴む。

「帰りますよ。」

有無を言わせない、その言葉にカチン、ときたが引き摺るように連れていかれた。



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