ツキハナ〜月の花束〜
そう。
つまり、性気を吸う、ということは、読んで字の如く、性交におよぶ、ということだ。

「絶対にっ!!嫌だ!」

リヒトとなんて、冗談じゃない!

「しかし、私しかいませんよ?辛いのではないですか?」

淡々というリヒトは無表情で。

「死ぬわけじゃないから、いらん!!」

すごく、嫌だった。
のに───

「!っん…」

ハァッと溜め息をついた後、急に肩を引っ張られた。そして、よろけた隙をつかれて、キス、された。


あわてて、逃げようとしたが、後ろからキツく抱き締められ、逃げれない。
右手で、顎も固定されているため、そのままキスを受け入れるしかない。

「──────っ!」

目をギュッとつむり、僅かに抵抗をみせていた。
けど、リヒトの唇から暖かい空気のようなものを感じたとき、抵抗は止めた。



―ああ、このキスは私に性気を渡すため…―



キスだけでも、僅かながら性気の交換はできるのだ。ほんの僅かに限るけれど。

胸が、ちくん、と痛む。
その痛みが、何からくるのか考えることは、やめた。





< 64 / 76 >

この作品をシェア

pagetop