恋する心は“あなた”限定

あ……
空守君の言った通り、雨…降ってる…。


パラパラと灰色の空から雨が落ちてきていた。


「やべぇな…。俺、傘持ってくるの忘れた…。」


ハァ…と小さく溜め息をついた空守君は、乗り出していた体を引っ込めた。


そっか……。
朝は降ってなかったもんね…。


私、折り畳み傘なら持ってきたし……、思いきって空守君に言ってみようかな…。


「あの……空守君。良かったら、私……折り畳み傘を持ってきているから、帰る時に使って下さい…。」


かなり小さい声で言いながら、カバンから折り畳み傘を出した。


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