白の世界~last love~
「少し話さない?」
意地悪い笑顔を顔に張り付けてもう一度聞く。
そんなこと言われたら…
「はい…」
というしかないじゃないか。
…あたしって強引な人には結構弱いのかも。
鈴原さんにも勝てないしなぁ。
あたしは半強制的に都筑健の横に座るハメになってしまった。

…座ったはいいよ?
いいけどさ。
なんにも話さないんだけど…。
あたしは別に話すことがないから話さない。
都筑健は何か話すことあんじゃないの?
用もなしに止められたとかだったらヤダなぁ…。
「あの?」
「はっはい!」
声裏返っちゃった…。
いきなり話しかけないでよ。
気まずそうに隣を見てみると笑いをこらえている姿が見えた。
…ムカつく。
「帰る」
あたしはそう言って立ち上がり出口へと向かった。
すると後ろから、「助けたのに…」って声が聞こえる。
何が助けたのにだ。
あたしは記憶あんまりないっつーの。
でも…
助けてもらったのは事実なのよ。
さすがに助けてもらったのに無視できるほど人ができてないわけでもない。
あたしはクルッとドアに背を向けてベンチに腰を下ろした。
「冗談ですよ♪」なんて隣で笑ってるし。
…うっざっ。
「なんか話題ありますかねー?」
「ない」
はい即答。
あんたと話すことなんてない。
というか声を出さないでほしい。
てかさぁ…
「あんたキャラ違くない?」
あっ。
ないとか言ったのに話しかけちゃった。
まぁ…いっか。
「そうですか?あんま変わんないと思うんですけど…」
絶対さっきと違うって。
「ふーん」
とりあえずそっけなく答えといた。
「じゃあ俺から質問していいですか?」
「…」
何もしゃべらなかったことをイエスと受け取ったらしく質問をしてきた。
「昨日から言ってた隼人って誰…ですか?」
ドクンッ。
心臓が大きく波打つのが聞こえた。
…聞かれないほうがおかしいよね。
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