白の世界~last love~
昨日散々名前呼んでたし。
頭の中を何かがぐるぐると回る。
あっ…ヤバい。気持ち悪い…
たぶん顔が真っ青だったんだろう。
「大丈夫!?」
と言って顔を覗き込んできた。
さすがに具合が悪すぎたから「無理…」って言ったら、
「我慢してて!」って言われて体がふわっと浮いた。
「えっ…ちょっと!」
気づいたらお姫様だっこされてた。
ビックリしすぎて気持ち悪いのなんて吹っ飛んじゃったけど…。
「やめ…「おとなしくしてて!」
なんて遮られた。
だからもう平気だっつの。
だけど都筑健の真剣な顔を見てると何も言えなくなってしまった。
…いや、違うな。
都筑健に隼人が重なって見えたから何も言えなくなったんだ…。
「すいません!湊ちゃん何か具合悪いらしいんですけど!」
はっとして気づいたらもうナースステーションの前。
…早っ。
「大丈夫!?」「ストレッチャー持ってきて!」
とかなんとか、いつの間にか大変なことになっていた。
「あの…」
なんて小さい声で言っても聞こえてないみたい。
はぁ…と大きなため息をひとつ。
そして息を深く吸って
「あのっ!!」
みんながこっちを見る。
あ、気づいた。
「もう平気なんで。大丈夫です。お騒がせしました。」
ペコッと頭を下げるとそのまま病室に走って逃げた。

病室に戻ったあたしは急いで自分のベッドにもぐりこんだ。
もちろん。カーテンを引いて。
最悪。
もう平気だって言ってんのに…あの馬鹿。
恥かいたじゃん。
…そんなことはどうだっていいんだ。
あいつが現れてから隼人のことが頭をよぎる。
忘れようとしてんのに…。
あいつは高2。
隼人も高2だった。
あいつは同室。
隼人も同室だった。
あいつは向かい側に寝てる。
隼人も向かい側に寝てた。
あいつはたぶん病気。
隼人も病気だった。
あいつも隼人もおんなじ声してる。
あたしが具合悪いときだっておんなじようにした。
…姿かたちは全く違う。
なのに…。
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