白の世界~last love~

都筑健と同室になってもうそろそろ1カ月が経とうとしていた。
あいかわらずあたしとあいつはあんまり話さない。
でも、居心地の悪い空間は少し和らいでいた。
鈴原さんといる時並みにいいわけじゃない。
でも。
また違った時間がそこには流れ始めていた。

ある日の午後。
2人そろって検査が終わってそれぞれのベッドでのんびりしていた時のことだった。
「ねー、そいえば湊ちゃんってなんのびょーきなの?」
あくびをしながらまるで寝言を言うように聞いてきた。
…人の病気のことを軽く聞くなぁ。
どんな神経してんだか。
「それ言わなきゃだめなの?」
あたしはめんどくさそうに答えた。
「別にー」
…なら聞くなよ…。
あたしは少しイラッと来たけど頑張ってこらえてた。
「あんたは何の病気なの?」
あたしも本を読みながら聞く。
「俺も言わなきゃだめ?」そんな感じのことを答えられると思ってたのにあいつは何も言わなかった。
不審に思ったあたしは本から顔をあげてあいつの姿をみる。
…都筑健の顔を見たあたしは何もしゃべれなくなった。
「さぁなんだろうね?」
ってあいつは笑顔で答えた。
普通の人から見たら普通にあっけらかんと答えたようにしか見えなかったと思う。
だけど…。
あたしには分かる。
それは何かを押し殺して無理やり笑っている…
そんな悲痛な笑みだった。
あたしはその笑顔を見た後から何もしゃべれなくなってしまった。
なんて声をかけたらいいんだか分からない…。
今のあいつ…
都筑健の姿は昔のあたしにあまりに似すぎていた。
隼人が消えてから周りの人に振りまいていた笑顔のあたしに。
都筑健はそのあとも何もなかったように普通に話しかけてきた。
でもあたしは「あぁ」とか「うん」とかそんな曖昧な返事しかできなかった。


< 14 / 28 >

この作品をシェア

pagetop