白の世界~last love~
あの時の気持ちを忘れたくはないから…。
隼人との思い出が薄れていく中で新しい思い出が重なってくのはしょうがないと思ってる。
でも、「恋」という思い出だけは隼人だけにしておきたい…。
寿命もそんなに長くないしね…。
「ほらっ!そろそろ寒くなってくるころだから部屋戻んなさい!」
「…はーい」
体を温めてくれていた太陽は傾き始めていて、少し涼しくなった風があたしの髪を撫でた。
少し寒さを感じたあたしはおとなしく部屋に戻った。
…都筑健の待つあの部屋へ。


少し遠慮がちに病室のドアを引く。
ふと都筑健のベッドを見てみるがそこに彼の姿はなかった。
…少し安心。
やっぱり顔を合わせるのは気まずいから。
自分のベッドのまわりのカーテンを引き、ベッドに腰かけた時だった。
「ここが俺の病室ー」
あっ…戻ってきた…?
「おっ結構綺麗じゃーん!」
「もう1人いるからそんなにうるさくすんなよ?」
「わかってるってー」
戻ってきたのは都筑健とその友達数名だった。
友達は1人や2人ではなく4.5人。
しかも女の子もいるようだった。
キャッキャという高い声が聞こえる。 
うるさいなぁ…。
あたしはうるささから逃れるために布団にもぐろうとした時だった。
腰かけていたのを寝る体制に帰るときに音が聞こえたのだろう。
都筑健の友達の一人があたしのほうのカーテンを指さして言った。
「ねー健ぅ。こっちにいるのって女の子?」
「あー…そうだよ!」
…あたしを話しに巻き込むなよ。
「健女の子と同室なんだーっ!!」
「着替えとか見ちゃったりする?」
「見るわけねーだろっ!馬鹿かお前ら!!」
くっだらない。
外に出ようかとも思ったけど今ぬけ出したら絶対に捕まるに決まってる。
…耐えろ。
「ここの女の子って何歳?」
「さぁ?たぶん俺より下だと思うよ?」
「年下かぁ!かわいい?」
「うん。俺は好きなタイプ」
「年下に惚れるとかありえねーっ!」
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