白の世界~last love~
屋上のドアを開けると星がすごくきれいだった。
この病院は都会から少し外れているため星がきれいに見える。
窓から見るのと屋上に寝っ転がって見るのとは大違いだ。
行ったことはないけど…これがプラネタリウムみたいな感じなんだろうなぁ…。
あたしは空に飲み込まれるようにその場から動けなくなっていた。
…このまま消えたいなぁ。
それで隼人の側にいけたらどんなに楽なんだろう…。
そんなことを思ったら意識が戻った。
「無理なのに…ね。こんなこと病院で思ってたら失礼かな?」
…星に話しかけるなんてあたしじゃないみたい。
でもなんか無性に話しかけたくなったんだ。
誰かに…隼人に。
「んー…そろそろもどんなきゃなぁ」
夕食の時間にいないのが分かったら鈴原さんに怒られるし。
夏の匂いがする冷たい風を深く飲み込む。
そして思いっきり深呼吸をする。
「っよし!行くかぁ~」
あいつらがいないことを願って。
まぁあいつらがいてもあたしは普通にするけどね。
だってあたしの部屋に入ってって文句言われる筋合いないし?
…こんなんだから病院に敵が増えるんだろうなぁ~。
…ははっ、と少し笑えてきた。
なんか…久しぶりに自然に笑ったなぁ…。

あたしの部屋の前。
んー…音はしない。
誰もいないかな?
だったら入るかー。
でも…もしものことを考えて静かにドアを開ける。
…開けたんだ。
開けたとたんあたしの目の前には都筑健とその友達のキスシーンがあった。
2人はあたしに気づいてないみたいでそのままキスを続けていた。
…どうしよう。
さすがにこの状態の中ベッドに行くなんてことはできない。
あたしはそのままドアを静かに閉めた。
そしてそのままさっき通った道を走って戻った。
屋上に着いた時にはもう前が見えなくなってた。
目からは涙があふれて止まらなかった。
そして心臓の発作も。
苦しいからか悲しいからか…よくわからない。
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