白の世界~last love~
ん~…でも!!
「だってこの部屋で一人なんて寂しいでしょうが!!大部屋なら6人入れるから健君の一緒よ?」
「じゃああたしをこの部屋に残してあいつを大部屋に行かせて!」
「無茶言わないの!湊ちゃん一人残してもいいわ?でも、あとから入院する人が来たらここの病室に入ってももらうことになるわよ?」
「うっ…それは…」
ヤダ。
ならまだあいつのがマシ…。
でも一緒も嫌だ…。
「あたしのわがままだってわかってる!けど…「分かったよ」
あたしの言葉をさえぎるようにドアが開いた。
そこにいたのは…
「都筑…健」
拒否し続けている彼の姿だった。
「あの…!」
「俺病室変えてもらって結構なんで。あ~…でも彼女連れ込めないんで湊…ちゃん?移してもらっていいですか?」
あたしを見下ろす彼の瞳は冷え切っていた。
いつもの人懐っこい彼じゃない。
…怖い。
「そう…湊ちゃんも健君も了承してるから考えてみるわね?まぁ2・3日は待ちなさい。」
鈴原さんの落ち着いた声が余計この場を悲しいものにさせた。
チビ達はなんだかよくわかんなそうにしてたけど…怯えてるように見えた。
でも…このなかで一番怯えてるのはあたしだろう。
震えてるし…。
「じゃあそういうことで。」
彼…都筑健はそれだけ言うと自分のベッドに戻りカーテンを引いてしまった。
まるでこれ以上近寄るなとでも言うように…。
チビ達はこの空気に限界を感じたんだろう。
3人で目を合わせて逃げるように病室を出て行った。
続いて鈴原さんも「それじゃぁ」と言って出てってしまった。
取り残されたあたしたち2人は恐ろしく険悪なムードに包まれていた。
あたしは謝ろうと思って、思い切って声をかけてみた。
「あの…さっきはごめんなさい…」
めずらしく素直に謝ってみる。
でもあいつからの返事はない。
少しイラッ…ときてしまうのはいつもの癖。
堪えろあたしっ。
今日はあたしが悪いんだからっ…。
「あのっ…!言い過ぎました。ごめんなさい」
あいつの顔は見えない。
でもカーテン越しから頭を下げる。
それでも返事はない。
というか物音ひとつ立てない。
…堪えろあたしっっ。
「あたし大部屋行くから。そしたら彼女とのんびりできるでしょ?」
負けずに話しかける。
でも返事は何もない。
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