白の世界~last love~
ついにあたしは怒ってカーテンを思いっきり開けた。
シャッ…
音を立てて開いたカーテンの先には座って本を読んでる姿があった。
いきなり開けたことが気に障ったのかやっぱり冷え切った目であたしを見た。
「何?」そう一言だけ言って。
「人が謝ってんのに何の返事もしないってどうよ?人として」
「人がいないところで散々悪口言ってる人に言われたくない」
いつもとは違う…いつもよりも低い声で諭すように言った。
「それについて謝ってたじゃん」
「謝られたって許すかどうかは人の勝手だろ?…出てけよ」
その言い方にムカついたあたしは
「分かったよ」と怒鳴るように言ってから病室を出た。
もちろん、ドアを大きい音をたてさせて。
どんどんと歩幅を大きくして歩く。
むーかーつーくー!!
あたしが悪かったよ?悪かったけどさ!!
あんな言い方はなくない??せっかく謝ってんのに…。
「人が珍しく頭下げたのに…」
向かった先は屋上。
屋上に着いた途端なぜかものすごく寂しくなった。
こころにぽっかりと穴が開いたみたいに…。
いつも隣にいるのが当たり前だと思っていた人が急にいなくなったように。
…なんでだろう。
隼人がいなくなった時のような虚しさに襲われるのは。
あいつと隼人はまるで違う。
体格も性格も何もかも…。
声は一緒だけどね。
でも、隼人が消えた日以来笑ったのはあいつと話してるときだけだった。
ちゃんと笑えてた。
…隼人の影を重ねてたからかもしれない。
それでも笑えてたんだ…。
あいつが女の子とキスをしてた日。
どうしてあんなに悲しくなったのか分からない。
どうしてあんなに苦しくなったのか分からない。
…いや。
分かってる…気がするけど認めたくないんだ。
隼人の隣にいた時のドキドキと一緒と認めたくないんだ。
だって認めたらあたしの中にある隼人の存在が消えてしまいそうなんだもの。
同じ病院内にいるのにあたしはあいつとの距離がもう何キロも離れてしまったような気がしてならない。
不安。
絶望。


……愛しさ


気づいてしまったあたしは…止めるすべが分からない。
っていうか彼女がいる人を好きになってしまった。
叶わない恋…ってやつ?
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