白の世界~last love~
過去
「こんにちは!えっと・・・湊ちゃん・・だったよね?」
黒ぶちメガネをかけた青年。
伸ばしっぱなしの少し茶色がかった髪。
とても優しいオーラを放っていた。
新しい同室の男。
あたしは彼に一目惚れをした。
彼の名前は隼人。瀬川隼人。
高校2年生。
あたしの初恋の相手だった。
隼人とあたしはいつも一緒にいた。
部屋でも、外でも。
隼人にもあたしにも友達がいなかった。
隼人は一応高校に通っていたものの、元から体が弱く休みがちだったのだ。
だから友達と呼べる人がいなかったらしい。
だからお見舞いにも誰も来なかった。
あたしにもお見舞いに来てくれる人なんて誰もいなかった。
だからあたしたちはいつも一緒にいることで淋しさを紛らわせていたのかもしれない。
隼人は優しかった。
外見からも思ったけど、内面に触れてみてもっと思うようになった。
あたしが寂しそうな顔をしているといつも黙って隣にいてくれた。
注射が怖いときは手を繋いでいてくれた。
ご飯の時、プリンを奪ってもなにも言わなかった。
隼人はいつも笑って、ちょっと低めの声で優しく笑っていた。