白の世界~last love~
ガタッ…
「んっ…」
物音がして起きてみるとまぶしい日差しが窓から差し込んできていた。
あ…もう朝なんだ。
鎮静剤を打たれていたせいか少し寝すぎてしまったようだった。
昨日のことがあったからか少し体がだるい。
首だけを動かし横の時計を見てみるともう11時を過ぎていた。
寝すぎた…。
そう思っていても体が動くのを拒んでいるようで起き上がることができなかった。
しばらくベッドの上でボーッとしているとカーテン越しに誰かが部屋に入ってくるのが分かった。
「誰…?」
女の子の部屋にノックもなしとは失礼な。
「あっすいません。起こしちゃいましたか?」
この声…隼人の声…!
今まで動こうとしなかった体はいとも簡単に動きベッドから降りてカーテンを開けていた。
「隼…人!!」
シャッと音を立てて開いたカーテンの先には隼人ではない男の姿があった。
「え?隼人って誰ですか?」
いきなり自分の名前とは違う名前を呼ばれたからだろう。
男は不思議そうな目であたしのことを見ていた。
「あ…すいません…間違えました」
相手の男が隼人じゃないことにあたしはがっかりした。
そしてそのままカーテンを引き身だしなみを整えようとした時だった。
「あっ!ちょっと待ってください!!」
「はい?」
いきなり呼びとめられたことに不信感を抱きながらもちゃんと返事をしたあたし。
…偉いかも。
なんてのんきに思っていた次の瞬間。
「俺今度からここに入院することになりました!都筑健(つづきたける)と言います!えーっと…よろしくね!」
さわやかな笑顔をこちらに向けてくる男…もとい都筑健とやら。
こういう系の男はあたしが最も嫌いとする部類の男だった。
「名前…教えてもらってもいいですか?」
「…湊」
「湊ちゃん?よろしく!」
あぁ…笑顔がまぶしい…。
そして鬱陶しい。
というか…待て。
ちょっと待てよ。
「ここに入院って…ここの部屋?」
「はい!お邪魔することになりました!」
その言葉を聞いた瞬間あたしが都筑に対して発した一言。
「ふざけんな!あたし、認めないから!!」
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