白の世界~last love~
そしてそのまま病室をでてナースステーションへと走った。
ふざけんな…!
なんで隼人と同じ声のやつと一緒に生活するしかないんだ!
せっかく…せっかく思い出にしようと思ってるのに!!
「鈴原さん!!」
ナースステーションに着いたあたしは受付のところにダンッと手を叩きつけ、彼女の名を呼んだ。
走ったからと言ってそんなに息が乱れる距離ではない。
なんせ30メートルもないもんで。
「湊ちゃん!?昨日あんなことあったのに走っちゃダメじゃない!」
「そんなの平気だから。それより部屋。変えて!」
「まだ言うの?彼は昨日湊ちゃんを助けてくれた子じゃない!我慢しなさい!」
「無理ったら無理!あんな…隼人と似てるやつと一緒にすんな!!」
「似てるかしら?」
「にーてーるー!!」
こんなあたしたちのやり取りに耳を傾けている他の看護師。
笑いをこらえているのがバレバレだ。
ホントに鬱陶しい…。
「今仕事が忙しいからまた後でね?文句なら聞かないけど」
「すーずーはーらーさーんー」
「早く病室戻る!検温するよ!」
ピシャっといわれてしまったらそれ以上何も言えない。
「…はい」
その一言以外は。


鈴原さんには病室に戻るように言われた。
だけどあたしはそんなに素直な子じゃない。
ひねくれてるから。
病室をさーっと通り過ぎ屋上へと向かった。
屋上は6階の上にあるためあたしは階段を登った。
エレベーターもある。
だけど、エレベーターを使うといつ誰に見られてるかが分からないので階段を使うようになった。
階段は滅多な事がない限り人がいない。
階段もやっぱり白。
病院内はどこも白ばっかりで押しつぶされそうになる。
精神的に。
精神がまいってるときに白は辛い。
それこそ真っ黒に塗りつぶしてしまいたくなる。
だからあたしは階段は少し早目に上る。
いつもそんなことをしているからかそんなに息も上がらなくなった。
やっと長い階段を登り終えてやっと屋上へと続くドアの前に立った。
あたしはひとつ深呼吸をした。
そしてゆっくりとドアを開ける。
ギィ…っと少し古びた音がする。
あたしはこの開けた瞬間が好き。
< 8 / 28 >

この作品をシェア

pagetop