PRAY MACENARY

カッハッハと笑う飯倉。

佐良は何がそんなに可笑しいのか理解出来ず首をかしげる。

「いやな。
今はあんな感じだが、アイツは結構有名なパイロットだったんだぞ。

『漆黒の妖狐』なんて大層な二つ名までもついつてな。」

飯倉は、流石に知らねぇか、と再び笑った。

「その話、あまり広めないで貰えますか。

飯倉さん。」

格納庫に凛とした声が響くのと同時に飯倉の笑い声が止んだ。

コツコツと静寂な格納庫に響くヒールの音。

「他人の過去をあまり軽々しく話すと、嫌われますよ。

特に女性には…。」

電灯に照らされた姿は黒のトレンチコートに身を包んだ霧野。

黒いトレンチコートと白い肌が対称的で見ようによっては不気味な印象にすらとられてしまう。