PRAY MACENARY
「いいじゃねぇか、別に減るもんじゃねぇんだ。」

苦笑いをした飯倉は手に持ったスパナをゆっくりと工具箱に納めた。

「それで、どうしたんだ?

お前が格納庫に来るなんて珍しいな。

爪狐の整備なら問題ないぞ。」

乗るか?と親指で爪狐を指した。

「乗りませんよ。」

吐き捨てるように言う霧野は呆れたように黒髪をかきあげると、

「佐良…借りても良いかしら。」

と本題を切り出した。

「僕…ですか…。」

キョトンとしてる佐良の横で飯倉はニヤケて無精髭を撫でながら

「整備はもう大丈夫だ。

持って帰ってもかまわねぇよ。」

と笑った。

「そう。

佐良、格納庫前の車に来てちょうだい。」

霧野は用件だけ伝えると踵を返し闇の中に消えて行った。

佐良は「冗談が通じねぇな。」という飯倉の小さなボヤキを聞きながら霧野の後を追っていた。

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