PRAY MACENARY
「そのようなことは言っていませんよ。

必要があれば増援も向かわせます。

必要があれば…の話ですが。」

あなたたちには必要ないでしょう?電話の向こうで笑みを全く崩さず、そう言葉が続くように霧野には聞こえた。

「それでは、私はこれから会議がはいっていますので…。

ご健闘をお祈りしていますよ。」

そう言って、通話は途切れた。

通話の途切れた受話器を置くと、霧野はゆったりとした仕草で煙草に火を灯す。

「軍を動かす費用を考えたら、ここを落とされる方が被害が少ないと踏んだ…か…。」

必要ならば…。

それは霧野にとって必要ならばではない。
軍にとって、ここを守る必要があるならば…ということだ。


敵陣営から見れば、今回の配備は地理的な制圧を目的とした作戦というよりは、一年前の戦闘で失われた兵士達への弔い合戦というところだろう。

そうでもなければ、ここを落とすメリットはそれほどない。

霧野はそのように考えていた。

「あちらの方が…、人間的には好きになれそうね。」

紫煙を室内に漂わせながら霧野は窓の外を眺めた。

外ではパイロット達が談笑しているのが見える。自己紹介もすんだようで、和やかな様子だ。
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