PRAY MACENARY
「彼らもAMのパイロット…。兵士なら、戦場に赴く者なら…死ぬのは覚悟していることだろうけど…。」

何人が生き残れるのだろう?

霧野は自らもやっと聞き取れる程小さな声で呟く。

その言葉の一つ一つに小さな祈りを込めるように。

叶うことができるなら…仲間と呼ばれる者が死んでいく姿は見たくない。

死を待つ私に死が訪れるというのなら、その運命…喜んで従おう。

ただ、仲間が死者になりゆく中で自分だけが生者として生かされる運命であるのならば…。

もう、その運命だけには従えない。その時は、どの様な運命の中に私があろうとも、私は戦場に赴き自ら死を享受しよう。

たとえ、その結果が、ここのこの会社の全滅といった形となろうとも…。

「ずいぶんと…、ずいぶんと自分勝手な話だね。

今まで死んでいった皆に聞かれたら、ふざけるな。と言われる…かな。」

温かみのある声はポツリポツリと死した者達への思いを言葉へ変えていく。

霧野の脳裏には格納庫にあるであろう自分専用の機体、爪狐を思い浮かべられていた。

「ねえ。私、まだ…。まだ皆のとこにはいけないのかな。」

にわかに霧野を包んでいた仮面が剥がれ落ちていくようだった。いつもの無表情、冷たささえ感じられる霧野ではない。

純白の雲が漂う青空を見上げながら、悲しそうに笑う霧野の顔はどこか純粋で、見た目相応な幼さが残る少女の笑顔だった。



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