花の咲く頃に
「僕は嬉しいよ」
顔の見えない彼は、少し不気味に見えた。
「今から信じられない話をするけど、よく聞いて」
そう言って、彼は身体ごと私に向いた。
私は無意識に一歩後ろに下がった。
何かにしがみつきたい衝動にかられ、すぐ横の本棚に片手を置いた。
というか、掴んだ。
「美桜……」
彼は悲しそうに私の名前を呼んだ。
目尻の下がった彼の目。
その瞳は、金色に輝いてた。
白い肌に金の瞳が余計に映えて見える。
それを私は怖いと思ってしまった。