花の咲く頃に
私は夜の図書館に訪れた。
夜の彼に会いたいと思ったから。
図書館の入口に手を掛けると、鍵が閉まっている。
いない……。
私は入口の前に腰を下ろした。
真夏の夜は蝉の声がする。
風が吹いて、木の葉っぱがザワザワと揺れる。
私が昨日も、今日の昼間も図書館に来なかったから彼も来ないのかな。
それか、彼は毎日は来ないのかも。
空を見上げると月が明るく光っていた。
「満月かな……」
「美桜…!」
左を向くと、眼をまんまるくした彼が立っていた。