花の咲く頃に



鍵を開けて中に入ると、一番奥まで無言で彼の後ろを歩いた。


さっき見た彼の瞳。

やっぱり少し怖かった。



「もう会えないかと思った」


彼は窓側、私は壁側。

それが私たちのいつもの距離。



「正直混乱した。でもアオイはアオイだから」

「美桜……。ありがとう」


私は首を横に振った。


お礼を言いたいのは、私の方だ。

私の日常を変えてくれて、ありがとう。





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