花の咲く頃に



「約束」


私は黙って頷いた。

胸の痛みは取れないけれど、今ワガママを言ったってしょうがない。



「私からも約束がある」

「何?」


「絶対に、突然いなくならないで」



今までそこに当然の様にいた人が、突然いなくなるのは怖い。


私はそれを二度経験した。

お父さんと、お母さん。


だからもう二度と嫌だ。



「お願い……」

「分かった。約束する」



別れは必ず来る。

だから、『さよなら』を言わせて。





< 58 / 88 >

この作品をシェア

pagetop