花の咲く頃に
本当の彼
だいぶ落ち着いてきて、お父さんから一歩下がる。
「ありがと」
胸を貸して貰ったお礼を言うと、もう一度頭を撫でられる。
なんだか急に照れくさくなってお父さんの顔が見られなかった。
「図書館、入るか?」
そう言って、お父さんはポケットから鍵を取り出した。
それはいつも彼が持っていた鍵だった。
「これ、お前にって」
お父さんは鍵を持った手を私へ差し出した。
私はそれを受け取る。
「ありがとう。だけど今日は入らないでおく」
「そうか」
中に入ったら、きっとまた泣いてしまうと思うから。