愛恋
痕跡
「ごめん、今お前何つった?」
11月にしては寒すぎる。
ピンと張り伸ばしたような冷たい空気に
彼の声が響く。
「もう。やめよう」
人ごみに飲み込まれてしまいそうな声でもう一度、その言葉を振り絞った。
「・・・どういうこと?」
微笑しながらも、今にも泣きそうにつぶやく彼。
「別れよ」
こんなこと言いたくなかった。
ドラマみたいだなと思った。
こういう時に限って変に冷静に考えたりしていた。
目の奥がじんわり熱くなっていく。
やばい・・・
「じゃね」
笑顔でそう言った。