夜の蝶たち~沙織~
「もちろんはじめはお客さんにも覚えてもらってないから指名が取れないから、保障時給って言うのがあります。うちは1ヶ月間、ポイントを取れても取れなくても、決めた時給を払わせてもらいます。その間に、自分のお客さんを捕まえてください。ここまではいいかな?」

「はい。大丈夫です」

「この表は更衣室にも貼ってあるから、分からなくなったら見るか、僕に聞いてください」

「はい」

「じゃあ、次に、時給のほかのお給料について。あ、飲み物、飲みながらでいいですよ」

「ありがとうございます」

正直、緊張しっぱなしで、のどが渇きっぱなしだった。

「緊張しなくて大丈夫だからね」

「はじめてだから、ドキドキしちゃって」

「そうだよね。でもきちんとバックアップはするんで、安心して、いつもの自分でいてください」

そう言って、笑顔を見せてくれた。

「さあ、お給料のつづきね。時給以外にはバックって言うのがあります。これは、セット料金・・・あ、キャバクラではお客さんから時間ごとにお金をもらうようになってます。うちは入店の時間ごとで料金が変わるんだけど、それはまた後で説明するね」

「はい」

「そのセット料金以外にお客さんからもらうお金が、1番多いのがフードやドリンクだね。おつまみだったり、飲み物だったり、ボトルだったり」

「ボトル?」

少しずつ、緊張が解けてきて、質問してみた。

そうすると、三沢さんがにこっと笑った。

「少し、緊張が解けてきたかな? 分からないことはどんどん聞いてね」

「はい」

あたしもつられて笑顔になった。

「ボトルって言うのは、お酒なんだけど、ほら、あそこにいっぱい並んでるでしょ?」

そう言って、棚にずらっと並んだお酒を指した。

「お客さんが好きなお酒を買ってもらって、キープしてもらうんだ。ほら、お酒のビンにタグがついてるでしょ? あそこに名前が書いてあるんだ」

「なるほど。じゃあ、あれは次に来てもまた飲めるってことですね?」

「そうそう! 正解! 売上バックって言って、セット料金以外でお客さんがお金を出したものの10%を女の子に還元してます」

「じゃあ、おつまみとか、お酒をいっぱい頼んでもらえばお給料が増えるんですね!」


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