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きっと呆れているだろうなと思えば、
案の定、彼は口をあんぐりとひらけ、こっちをみていた。
「ごっごめんなさい…」
いたたまれなくなって慌てて謝ってうつむく私。
「ぷ…フフ」
しばらくして彼の笑い声が降ってきた。
と同時にすらりと伸びた綺麗な手で私の頭にポンポンふれる彼。
「ちゃんとご飯たべなさいね…」
ポツリと呟くようにそう言うと、
体中に着いた砂をはらいもせず、
とんがった靴を拾い上げてそのままガードレールの向こうに消えていった。
私は、その猫背な後ろ姿を見えなくなるまで見つめ続けていた。
なぜか、胸がギュッと締め付けられたように痛かった。