203



閉じられた扉を無意識に目で追い、ふれられた頭に手をやる私。












ガチャン





「ただいまー。ごめんなさいね、近所の小畑さんとつい長話しちゃったぁ、
ってあら?朋美は?」

見つめていた扉が急に開き、碧さんが帰ってきた。

そうして、そのまま目が合う。

「?どうかした?」

「あ、なんか…
用事あるからって帰るって…」

「あらそぅ…」


あきらかに様子が違うであろう、私に碧さんは深く追及してこようとはしなかった。


その様子に内心、ホッとする気持ちと
気を使わせてしまっている罪悪感でいっぱいになる私。



「すいません、私も帰ります。ごめんなさい。」

「え?ちょっと…」



とりあえず申し訳ない気持ちを言葉にすると、
足早に碧さんの部屋を出た。



きっと変に思われたに違いない。



でも、急に嶋朋美があんな事するから…


冗談って言ってたあの言葉にはちょっと傷付いたけれど、






あんな優しさになんて、


初めて出会ったから…。




< 46 / 57 >

この作品をシェア

pagetop