ドラゴン・テイル

田園都市『ルーヴァ』


 森に差し掛かる手前に、小さな立て札があった。

 ─モンスター出現地帯。

 赤い文字で書かれたその言葉を、ウルは軽く一瞥。まるで何も無かったかのように森へと入った。

 この森なら、モンスター退治を依頼された時に何度となく踏み入れている。今更怖じ気付く事は無い。

 だが、森を抜ける事を前提に来たのは初めてだ。

 また違った緊張感を抱く。

 この森の先は、確か『ルーヴァ』と言う都市がある。

 ウルの今日の目的地だ。



 森の中は、今が昼間だと言うことを忘れてしまう程薄暗かった。
 森を両断するように延びる街道も、所々が雑草に遮られている。

 ウルは構わず歩き続けた。

 暗い森の中、風だけが変わらずに吹き抜けている。

 不意に、すぐ近くの茂みが鳴った。

 風で動いたにしては不自然な音。

 だが、特に異様な気配は感じない。

 ウルは歩く速度を緩めず僅かに深く息をつき、小さく呪文を唱え始めた。ウルの動きに合わせて、茂みの音も付いてくる。

 しばらく歩いたところで足を止めた。

 音も同時に止まる。

 はぁ……とため息を吐いて振り返った。音のした茂みに視線を向けて口を開く。

「出てきたら? ストーカーのつもりなのか知らねぇけど、モロバレだぞ」


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