ドラゴン・テイル

 森を抜けた頃には、もう辺りは夜の闇に覆われていた。

 ロンドさんとコルティは無事ザイルに着いただろうか…。

 二人と別れたのはまだ昼時だ。日のある内にザイルには着いているだろうが…、ロンドさんはだいぶ体力を消耗していた。

 無事に着いていると良いが……。

 そう思いつつ、ウルは辺りを見渡す。灯り一つ無い。ぼんやりと月の光で照らされている程度。

 その僅かな光の中で確認できるのは、辺りが平野で、街道は緩やかに東へカーブしていることだけだった。

 街道の先には何も見えない。
 ただ暗い闇が続くだけ。

 ─ルーヴァはモンスターの襲撃を受けた……。

 ロンドの言葉がウルの脳裏を駆け巡る。

 町に生き残りが居て復旧作業を始めているのなら、灯りの一つくらいあって然るべきだが……。

 最悪の状況が浮かぶ。

 ─…ダメだ。悲観的になるな、俺。

 小さく頭を振り、ただひたすら街道に沿って歩く。



 どれくらい歩いただろう。
 遙か前方に小さな灯りが一つ見えた。

 ─あれは……──!

 少し歩調を早め、灯りの元へ急ぐ。


 それは、小さな松明だった。
 風に吹かれ、ゆらゆらて揺れている。

 ─誰かいるのか?!

 はっと辺りを見渡すが、どこを見ても、何もない平原が広がるばかり。

 ロンドさんが焚いていったのか……? いや、それならとっくに消えているはずだ。

 ロンドがルーヴァを出たのは昨夜。もう丸一日経っている。
 そんな長時間松明が保つハズがない。


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