ドラゴン・テイル

「でかしたぞウル!」

 まだフラフラしながら立ち上がって言うクレイグ。

 クレイグの声に弾かれたように飛び上がり、驚いた顔で振り返るピクシー。

 ジリジリと歩み寄ってくるクレイグに怯えているのか、魔法で結界を破ろうと必死だ。

 炎、風、水……色々な魔法を駆使するが、結界はその全てを吸収していく。

 とうとう諦めて、ちょこんと座り込んでしまった。

 しゅんとしたように肩を落とし、上目遣いでクレイグとウルを見上げる。まるで叱られた子犬の仕草だ。

「……で、どうするんだ?」

 ウルは、クレイグを横目に問う。

「どうするっつっても………なぁ…?」

 クレイグは、救いを求めるようにウルを見た。

 正直、今の一連の行動が可愛らし過ぎて、怒りが消えてしまった。

「んじゃこのまま放っておくか」

「……鬼かお前は」

 この暑さの中、日陰も無い場所で結界に閉じこめたまま放っておいたら、いくらピクシーと言えど辛いはずだ。

 クレイグは結界の前で腰を落とし、ピクシーを覗き込むようにして言った。

「おいお前。もう二度と人間に悪戯すんなよ? 俺だったからまだしも、ウルだったら速攻返り討ちにされてたぞ」

 ピクシーは、大きな目をパチパチと瞬かせ、コクンと頷いた。


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